この記事を読めば,各種目の目的を定めることにより重量を決定する考え方を習得することができる。トレーニングの重量設定で迷われている方,なんとなく重量を設定している方は,ぜひこの記事を参考にしていただきたい。
迷っているかた重量の定義
筋トレの重量は人によって様々である。ベンチプレス80kgを10回できる人もいれば,1回しか上がらない人もいるから当然のことである。そのため,筋トレの重量設定は負荷の重量ではなく,1セットで持ち上げられる回数(レップ数)を基準とする。重量は大きく,高重量・中重量・低重量の3つに分けられる。
ここで,レップ数とは1セットでの挙上回数である。例えば,ベンチプレス80kgを1セットで10回挙げられた場合は,80kgを1セット10レップ挙げたと表現する。
高重量
高重量とは1~5レップの重量を指す。高重量では,瞬間的に大きなパワーを出力する必要があるため,運動神経が鍛えられる。そのため,高重量トレーニングでは,筋力向上が期待できる。運動神経と筋力の関係について簡単に説明する。筋肉は筋繊維の集合体である。例として筋繊維が100本あるとする。この筋繊維は,脳から運動神経を経て「動け!」と指令を受けることで,パワーを出力できる。ただ,一般的には脳からの指令に対して機能する筋繊維は7割程度と言われている。つまり,人間は筋繊維の7割のパワーでトレーニングをしていることになる。高重量トレーニングは,運動神経をよくすることができ,7割以上の筋繊維を働かせるようになるため,筋力が向上するというメカニズムである。
中重量
中重量とは6~12レップの重量を指す。中重量トレーニングでは,筋肥大の効果が最大化される重量である。この効果についてはトレーニングボリューム理論で後述するため,ここでは簡単な説明にとどめておく。筋肥大はトレーニングボリュームの大きさに依存するという論文が近年発表された。トレーニングボリュームは重量×レップ数×セット数で計算できる。このトレーニングボリュームはレップ数が6~12回の中重量で最大化できるため,中重量トレーニングは,筋肥大に効果があるといわれている。
低重量
低重量とは13レップ以上の重量を指す。低重量トレーニングでは,筋持久力が向上する。低重量トレーニングは,アスリートが行うこと多い。体をデカくする目的では,特に必要でないトレーニングである。しかし,肩トレは例外である。高重量・中重量では肩関節にかかる負荷が大きすぎてケガにつながる危険性があるため,肩トレの一部種目では,低重量トレーニングを採用していることがある。
ボリューム理論
昨今ボリューム理論が,筋トレ界で話題となった。ボリューム理論とは,重量×レップ数×セット数が同じであれば,同等の筋肥大の効果が得られるというものである。ただし,1セットで余力は残さないものとする。
重量 | レップ数 | セット数 | ボリューム |
100kg | 3レップ | 3セット | 900kg |
75kg | 12レップ | 1セット | 900kg |
この2つのトレーニングを例として考えよう。100kgを3レップを3セット行えば,ボリュームは900kgとなる。しかし,75kgを12レップ行えば1セットで900kgのボリュームのトレーニングができる。中重量が筋肥大に効果的であると言われているのはこのためである。
高重量よりも中重量の方が優れている?
では,体をデカくしたいのであれば,高重量トレーニングではなく,中重量トレーニングを積極的に取り入れてボリュームを稼ぐべきであると思わないだろうか。この考え方は短期的な目線では,正しいが,長期的に考えると間違いである。なぜ,長期目線で考えると中重量のみのトレーニングは不十分なのか。イメージしてほしい。ベンチプレスのMAX重量が100kgの人と80kgの人の体を。ジムに行けば分かるが,この2人の間には筋肉のデカさに圧倒的な差がある。この研究の主張が間違っていると言いたいわけではない。こういった研究の実施期間は長くて半年である。しかし,多くのトレーニーは1年以上のトレーニングをしている。つまり,短期的にはこの研究結果は再現性があることは間違いないが,長期的に再現性があるとは言えない。実際にジムでトレーニングをしている人の体を見れば,矛盾していることに気づくと思う。体がデカい人たちは,常にMAX重量を更新するためのトレーニングを積んでいる。これが,答え出ないだろうかと私は考える。
高重量と中重量の使い分け
この考えをもとに,私は各種目の目的を明確化することをお勧めする。目的とは,筋力向上と筋肥大促進のいずれかである。目的の分け方は,バーベルを使うトレーニングかダンベルを使うトレーニングかマシントレーニングかで決める。バーベルトレーニングはダンベルトレーニングやマシントレーニングと比較して,高重量を扱えるという特徴がある。イメージすればわかると思うが,ベンチプレス80kgは挙がっても,片手に40kgのダンベルでのダンベルプレスはできない。そのため,バーベルトレーニングは高重量トレーニングに適しているといえる。一方マシントレーニングは,対象部位に効かしやすいように設計されているため,中重量で丁寧に動作することを推奨する。残ったダンベルトレーニングの目的は,筋肥大・筋力向上どちらでもいいと考えている。私の場合は,半分の種目は筋力向上を目的として,残り半分は筋肥大目的とするため,ダンベルトレーニングでそのバランスを調整している。
まとめ
ここでは,高重量・中重量・低重量の定義とボリューム理論について私の経験を踏まえて,意見を述べてきた。私は,中重量のトレーニングは必要であるという前提で,日々高重量トレーニングでMAX重量を更新するような強度のトレーニングができているかが重要であると考えている。MAX重量を更新するためには,単純に高重量トレーニングを積めばいいというものではなく,フォームや体の使い方の感覚などの要素も絡むため,奥が深い。日々,フォームや感覚を強く意識することができれば,トレーニングの熟練度は向上し,理想の体に近づくだろう。
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